メルセデス・ベンツのトランスポーター その後1


 住宅街の狭い抜け道。もうすぐ家に着く・・・と思ったそのとき、オレの目には中年の女性が道路に横たわっている姿が飛び込んできた。幸い上り坂だったので、急ブレーキにもならずに手前に停車できた。

「どうしたの」

後席で女房が心配そうに聞くが、それに答えるのももどかしくオレはドアを開け、中年女性の元に走った。

 血が流れていないか、ひどく傷ついているのではないかとおそるおそるのぞき込んでみる。外傷はないようだ。しかし、低いうめき声を上げている。とりあえず事故ではなさそうだとちょっとだけ安心し、どうすればよいのだろうかと考える。まだ携帯電話は一般化していない時代だ。

 そのとき、前方から乗用車がやってきて止まった。

「どうしたんですか」

若い女性が降りてきてオレに声をかけた。

「走ってたら前におばさんが倒れてたんですよ」

この状況だと、オレがはねたと思われても仕方がない。先に説明し、どうすればよいか相談した。とりあえずすぐ横にある家に頼んで救急車を呼んでもらうことにした。若い女性におばさんを見ていてもらい、オレはインターホンを鳴らした。

「すみませんーん。前でおばさんが倒れてるんですけど、救急車を呼んでもらえませんか」

 

 

ドアが開いたので簡単に説明をする。横の家のご婦人はすぐに119番をしてくれた。電話が終わってオレと一緒に外に出てくる。ご婦人はオレのクルマを見て・・・

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  「あら、救急車もう来たの?」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・違います、違います。あれはオレのクルマです」

 

電話してからまだ1分もたってねぇって!

 

 数分後、本物のBENZ救急車がやってきて、中年女性を運んでいった。酔っぱらって寝ていただけらしい。まだ20時だぜ・・・。