2001年の年末、ベントラネットBBSで話題になった赤AGIPのベントラ。エンジンが換装してあるらしいことからちょっと話題になり、オークションのQ&A欄がしばらくにぎわっていた。
BBSにも書いたが、実はこのオーナーは高校のクラスメイトなのである。と言っても学校で会うだけで、プライベートな時間に遊んだことは一回も無い(たぶん)。卒業してから1年後にちょろっと街で会っただけで、もう15年以上会っていない。他の友人から「お前と同じクルマの赤いヤツにでっかくAGIPって書いて乗ってるよ、よく○○の原っぱにいる」と言うことを聞いたのが約2年前。聞いたのはホントにそれだけで、店の場所もメールアドレスも何にも聞かなかったし、原っぱに行っても一度も会わなかった。
いつもだったらこれでおしまいになってしまうのだけど、この不況である。いつまでもうじうじしていても何も変わらない。アクションを起こしてみようと久しぶりにやる気になったのであった。
おそるおそるQ&A欄で質問をすると、回答よりも先に「アルバムを探したぞ」とメールが来た。どうやら思い出してくれた様子。それから何度かメールでやりとりをし、2月18日にオークションで問い合わせをしてきた方に見せるとのことで、それに便乗して見せてもらうことになった。
その方は結局都合が悪くなってしまってキャンセル。一人だけたっぷり見させていただいた。
久しぶりに会ったE氏。後ろにあるのはうちの208D。
早速ボンネットを開けてもらう。メールでのやりとりの中で、エンジンはMB純正の3.35L・5気筒という話しは聞いていたが、開けてみると普通にベントラ!という感じ。改造とかチューンという感じは全くない。
エンジンにベンツの証は無いか・・・と二人で探していると・・・オイルキャップにはあるけどこれじゃあねえ・・・お、あったあった!ということでカムカバーの奥にベンツマーク(スリーポインテッドスター)を発見。
しかしうまく写らない・・・
そこで車内側からエンジンカバーを外して撮影することになった。
あったあった、ベンツマークがすぐ目の前に。
走行距離は19万km。買ったときは約5万km、そこから3〜4年で一気に十数万km、あとはほとんど乗っていないとのこと。
会社の社長さんですが登録は個人名義だそう。
そして車内後部。もともとはタイヤメーカーのサーキットサービス車・トータル一千万の豪華事務室車だったそう。それが5年経ってリースが終わりオークションに出た物を間接的に購入したとのこと。
で、豪華装備を「重くて遅い」と撤去し、釣り竿をしまえるようにしたり間接照明を取っ払って大きな蛍光灯をつけたり、棚を移設したり二段ベッドを付けたり・・・で今の姿となっているらしい。改造無しでそのまま使えるキャンピングカーが欲しくて探している人にはちょっとお勧め出来ないが、T1でキャンピングカーやトランポを作りたくて素材を探している方にはかえってこの方がいいのではと思う。
フラッシュを焚かずに撮るとこんな感じ。
装備を全部外し、フィアットパンダを載せてサーキットに行ったこともあるらしい。
思わず「その時の写真ある?」と聞いてしまったが、残念ながら無いとのこと。
これまでにメールで教えてもらった内容や直に聞いた話を総合すると・・・エンジンはその辺でどうこうしたものではなく、STB側で変更したもの(E氏曰く、STBに入ってきたときにはこのエンジンだったらしいとのことだから、ひょっとしたらドイツで最初から積まれていた??)MB製の3.35L5気筒・形式602。約5年前に購入したときは走行約5万km。それから一気に十万km以上走り、最近は倉庫代わりでほとんど走っていない。で、今19万km。
試乗もさせてもらった。
話しをしている最中、ずっとエンジンを掛けたままだったのだが、特に問題も感じられず、うちの208D(4気筒、ノーマル)よりもかえって静かな感じだった。
ノーマルの310Dに乗ったことがないし、装備の重量も違い、またクラッチのフィーリングがうちの208Dと全然違ったので参考程度にしかならないが、町中を2kmほど乗っただけでも208Dよりも速いことはすぐに分かった。平均速度や到達時間は同じなのかもしれないが、208Dだとグッと踏んで「もっと速く、もっと出ろ」と念じながら走るところが、赤AGIP310Dでは加速から巡航に移るタイミングが相当早かったような気がする。トルクが増えていて回転数も下がっているせいか、音も静かだった。208Dは高速道路だとひたすら全開で巡航だが、これだったら8割程度でイケるだろう。
見てのとおりオイル屋さんなので、オイルは相当いいものを使っていたらしい。19万kmと確かに距離は走っているが、丈夫なディーゼルだししかもメルセデス。更に自動車関係の仕事の人に乗り継がれてきたという代物。普通の人が年に1、2万km走る分にはそんなに支障無いんじゃないかな、というのが二人で話したときの一応の結論だった。ただ、10年・19万km経っているのでそれなりの配慮や心構えは必要であろう。
クルマのこと、高校時代のこと、仕事のこと・・・道ばたで何も飲まず・食わずに3時間も話し込んでしまった。途中で初バイクはE氏を経由して買ったなんてことも思い出して更に感慨に耽ってしまった。クルマだけでなく話しのすべてが刺激的な3時間であった。
シートは運転席・助手席のみ。すぐ後ろにほぼ車幅と同じ大きさの金属製の頑丈な棚がありました。二段ベッドは後部に横向き。取り外しは簡単に出来ると思います。最後部には荷物スペースがあるそうです(そこまでは見なかった)。子供はベッドに、大人は車体中央にマットを敷いて、足をベッドのしたに突っ込んで寝るという感じだったそうです。
まあ、この辺は“素材”として考えて、お好きなイスやお好きなベッドを組み付ければよろしいかと思います。床にはノーマルでも最初から平らな板が張ってあるので、改造は楽だと思います。
天井・壁面ともに内装処理がされています(ノーマルは鉄板に塗装だけ・明窓バンは下半分だけビニールがつく)が、傷んでいるので壁紙かなにかを張り直した方がいいかなと思いました。壁面は前に一度塗ったとのことです。
助手席の下にバッテリーがあるのですが、その横にインバーターを置いて100Vを取り出していました。車内には100Vのコンセントもありました。
ベントラネットのBBSで有志数名がいろいろと資料を探してみましたが、エンジンが何かを特定するには至りませんでした。車検証記載ミス説も出ていますが、真相はまだわかりません。
まあ、私の208Dノーマル(4気筒2300cc、12万5千km走行)よりも静かで力強くて速かったことは確かです。