Garageキック

Bicycle No.1 子どもの自転車を考える

 私が補助なし自転車に乗れるようになったのは小学校4年生の時だ。何回か練習した覚えはあるのだが嫌になってやめてしまい、ずっと乗らないでいたら4年生になってしまっていた。ある日、遊んでいるときに友達が怪我をしてしまい、自転車を家まで届けることになった。押して歩くのも面倒なので乗ってみたら割とあっさり乗れてしまい、すぐに自分用の自転車(ミヤタ・ガリバー)を買ってもらった。

 自転車に乗り始めたのが10歳・・・というのは人生に大きな影響を与えているように思う。反動が出ているとも言えるし、ある程度から先になかなか到達しない(・・・最近はしようともしていない)のもそのせいかもしれない。速い遅いはともかく、ヒラヒラ感は小さいときから身につけておいた方がよいのではないかと思う。

 で、自分の子どもの乗り物にちょっとだけこだわってみた。

photo:kent BMX 16inch 三輪車の卒業はまだまだ先ではあるけれど、勢いで自転車を買ってあげたのは幼稚園に入る少し前。トイザらスであれこれ見ていると、ものすごくカラフルで余計なおもちゃやかざりがついていない、大人用のBMXをそのままサイズダウンしたような自転車があった。子どもの自転車として見ると派手すぎるんだけど、'89の日高で池島選手のショッキングピンクKTMに心を射抜かれた私としては、「いい色じゃん」という感じ。まだちょっと早いかな、足が届かないし・・・だけど補助輪もついてるし、そのうち大きくなるだろう。なによりも大人用をそのままサイズダウンしている作りが気に入った。フロントフォークのエンドもプレスではなくて丈夫そう。アンパンマン自転車とかトーマス自転車にしようかとも思ったが、値段は大して変わらないし「ひょっとして一緒に走れるようになるかも」という期待もちょっとだけあって、こっちに決めた。

photo:kent BMX 16inch  "Kent"というブランドの16インチのBMXであった。組立を待つと40分ほどかかるというので、箱に入ったままで持って帰り、翌日組み立てた。高校生の時にサイクリングに凝っていて、自転車屋からフレームと部品を買ってきて一台組み上げたこともある。まあ懐かしい作業だった。

 しばらくは面白がって乗っていたけど、やっぱりまだ体が小さくてブレーキはかけられないしUターンで転ぶしで、乗ったり乗らなかったりの時期がしばらく続いた。

 補助輪を取る練習も何回かしたが、その都度嫌がって大騒ぎになった。もうすぐ年長というころのある日、原っぱでいつもの様に補助輪を取って乗せてみるがまったく駄目。「ほじょつけてー」と泣きそうな顔で言うので「はいはい」といいながら子どもの自転車にまたがり、足で地面を蹴ってクルマの方にスイーッと進むと、それを見て「のるー!!」と叫んでいる。で、後ろから軽く押して見たらいきなり50メートル位走って、転んだ。

photo:kent BMX 16inch  近所の幼稚園の園庭(舗装ではなく、土・砂で軽くうねりがある状態)でどんどん腕を上げていく子どもを見て、この自転車にして良かったと改めて思った。ほかの子の自転車を見ていると、ホイールベースが長すぎたり、フォークの角度が悪いなど乗りにくそうな自転車が結構多い。補助輪付きの時の安定感を重視した設計なのだろうか。スタンディング(教えていないのに勝手にやり始めた・・・ビデオの影響だろうか)で力を抜いてスイーッと曲がっていく姿は、エンデューロレースのビデオにでてくるヨーロッパのトップライダー達を彷彿させる。二輪の乗り物の楽しさをすでに体で感じ始めているようだ。近所のお友達の親にも好評だったようで、「あの自転車どこで買ったの?」とか、「買うならああいうのがいいなあ」という声も聞かれた。

 そのうちに横須賀のうみかぜ公園を知り、そこに来る小学生ライダーの自転車を見て「次はこんな感じのヤツかな」と思い始めた。大人用BMXと同じ20インチの車輪で、タイヤは細め。ハンドルは大人用ほどアップしていないが、MTBほどフラットでもない。子供が体にぴったりの自転車に乗っている姿は、見ていて気持ちがいい。

 その子にショップの名前を教えてもらって、ある日曜日に相談に行った。横須賀のショーワという店だ。

 「レースをやる訳じゃないんだけど、うみかぜ公園のようなコースを走りたい。いい自転車はありませんか」

 「レーサーは結構な値段しちゃうんですよね・・・ふつうの道では乗りにくいし」

photo:DYNO BLAZE  おだてられてレーサーを買わされるかなと思っていた(半分そうなることを期待していた)のだが、GT(自転車メーカー)のカタログを見ながら出てきた店主の言葉は予想とは正反対の内容だった。そして、ここの店で買う気になった。

 「こんなのはどうですか」

 と、出てきたのはDYNO BLAZEという小学校低学年向けのBMXタイプの自転車で、20インチの大人用BMXをシートだけ下げたようなデザインだ。うみかぜ公園で見た女の子のBMXレーサーとよく似ている。違うのはハンドルが大人用とほぼ同じ高さなことと、タイヤが大人用の太さであるぐらいか。ハンドルは変えればいいし、タイヤはBMXレースに出るのでなければ逆に太い方がパンクもしにくいしいいだろう。段差越えをすることもあるし・・・教え込んでる訳じゃないけど、まねしてやりたがるので。

 カタログを見ているとレース用もそれほど高くはなかったのだが、DYNO BLAZEで十分というかこっちの方が良い気がしてきたので早速注文。横浜から来たというと感激され、送料をサービスしてくれた。

 そして数日後、DYNO BLAZEが配達された。メーカー直送ではなく、いったん店に入れて途中まで組み上げセッティングしてくれたようだ。小さな子供向けにブレーキレバーを調整してあり、注意点がいくつかメモしてあった。

photo:DYNO BLAZE+ノーマルのハンドルバー
photo:DYNO BLAZE+モンキーのレーシングハンドルバー
photo:モンキーのレーシングハンドルバー
 組み上がって早速乗せてみるが、どうもハンドルが高いようだ。もう少し低いハンドルにしてみようかと思いMTB用のハンドルを買ってきたがここで問題発生。MTBのハンドルはクランプ部分が他の部分よりも太くなっているが、BMXのハンドルのクランプ部分は他の部分と同じ22.2mm。何件か自転車屋を巡ってみたが、BMXの完成車は置いていてもパーツまで置いている店は少ない。しかも子供用のレースハンドルとなると、注文しようとしても「なかなか入ってこないから」と断られてしまう。仕方がないのでいったんモーターサイクル用(SP武川のモンキー用レーシングハンドル)を付けてみた。高さはよくなったようだが、手前への絞り込みが大きくてハンドルを切ったときのポジションが今ひとつよくない。

photo:DYNO BLAZE+MTBハンドルバー  更にBMXショップを求めてさまよい、瀬田交差点近くのショップに相談したところ、クランプ部分にスペーサーが使われているMTB用ハンドルを紹介されてこれを購入。スペーサーを外し、両端を切りつめて子供サイズにして装着。これでスタンディングもコーナリングもOKだ。うみかぜ公園でも「体にぴったりの自転車に乗ってますね」と声を掛けられた。

 同じ店でシマノのフリー(リアスプロケット)も購入。大人用BMXの部品がそのまま使えるのもDYNO BLAZEのいいところ。ノーマルよりリヤを1T大きくして、「立ち上がり」と「回転」重視にしてみた。

 MTBを買った友達からは「(変速)ギヤがないじゃん」と言われることもあるようだが、「かるいギアにとりかえてあるんだ。もっとおもたくすることもできるんだよ」と言うと「カッコイー!」となる。子どもはノセることが大事だ・・・?


 MTBに私が初めて乗ったのは1988年頃だったと思うが、そのときの違和感は今でも強烈に覚えている。極端な前傾姿勢、こぎ続けていないと安定しないフロント・・・まるでオートバイのレーサーレプリカじゃないかと思った。かなり乗れる人なら大丈夫だけど、最初からこれに乗ったら腕に力を入れすぎてしまい、勢いで倒し込んでタイヤのグリップだけに頼るような乗り方になってしまうのではないか。ここ数年のMTBには乗っていないからわからないが、DHレーサーの形だけを真似たものが多いので、似たようなものじゃないかと思う。MTBはもう少しBMXに乗って、ヒラヒラ感を身につけたりいろいろな路面との対話が出来るようになってから・・・と思っている(あくまでもうちの場合)。

 変速ギヤももう少し大きくなってからにしようと思う。今は軽めのギアでグルグルこぎながら、ヒラヒラ感を体に覚えさせる時期ではないだろうかと考えている(英才教育をしている訳じゃないよ)。

photo:うみかぜ公園 photo:うみかぜ公園


 ハンドルをあれこれ交換している頃、ついでに近所のお友達の自転車のハンドルも交換する機会があった。とっても体が大きい子で、両足が地面にべったりついてしまい、三輪車のような位置にあるグリップを持つと手が膝に当たっていた。なんだか乗りにくそうだったのでお母さんにそれを教えてあげて、「ついでに交換しましょうか」と申し出たところ「お願いします」となった。ハンドル交換前は前輪の切れ方に対してハンドルの位置が妙な関係になっていて押して歩くのも辛かったのが、交換後はそれほど苦にならなかった。だいぶ乗りやすくなったのではないかと思う。
 
  photo:交換前 photo:交換後 photo:交換後

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