「レントゲン1回分」なんて話しをよく聞くようになったので思い出話をしてみる。
15年ぐらい前だったかな、母親の介護をしていたときのこと。病院でレントゲン写真を撮ることになった。確か胸だったような。
車イスを押してレントゲン室まで行く。レントゲン技師に「手伝ってください」と言われて中に入る。野球のキャッチャーがつけるプロテクターがお腹側と背中側に両方あるような形状の防具を渡されて着るように言われた。鉛で出来ているらしく、ずしりと重い。
つかまって立つのが精一杯の母親を立たせて支える。撮影範囲に入らないように、あと防具の切れ目が撮影装置に向かないように気をつけながら立ち位置を決める。レントゲン技師が
「大丈夫ですか。じゃあ撮りますよ」
と言いながら小走りで部屋を出る。ドアが閉められる。不思議な気分というか、不安感が襲ってくる。幼少時からレントゲンは何枚も撮られたことがある。怖いなんて思ったことはなかったはずなのに。
「はい終わりました。大丈夫ですか」
明るく声を掛けてくれるレントゲン技師。この人たちは仕事でこの場所にずっといるからたくさん浴びている。これ以上浴びないように家族が手伝うんだな。
レントゲンっていうのは医療目的で、体を切って中をのぞくより何千倍もメリットがあるから気軽にうけられるもの。しかも完全にコントロールされた設備の中での出来事だ。そんな中でも、自分が被写体(患者)じゃない場合はこんな風に厳重に防護服を着て作業するんだよ。

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