チョロQのデリバリーバンを見ているうちに「ん、これイケるな」とひらめいて一気に作ったのがこの一号車。グリルのTOYOTAロゴを削り、ヘッドライトをパテで埋め、グリル中央にはプラ棒の輪切りを貼り付ける。あとはひたすら細い筆で塗る。一号車は気合いが入っていたのでグリルのスジ入れもやってみた(出来はイマイチ)。まあ、単体で見ているぶんには十分感情を移入出来る。
値段も安いしマスク周りを少々加工するだけなので早速量産に入る。だが、やはり一号車では気付かなかった問題点が続々と出てきた。
面相筆を使って息を殺しながらヘッドライトとグリルを塗り分けていくときに、僅かな歪みで表情が一変してしまうのである。そういえばホンモノのクルマでも、ヘッドライト上部に2cmほどのまぶたを付けただけて雰囲気はガラリと変わる。縮尺1/80以下のミニカーでは0.25mm以下のシビアな戦いになるのだ。もう気分は人形師。ヘッドライトを塗るというよりは「眼を入れる」感覚である。人形の眼を入れたことはないんだけど。
銀を塗り黒を塗り、また銀を塗り黒で縁を描き、右目は上手くいったが左目を失敗し、やり直したら今度は右目とのバランスが悪く・・・と、両方とも納得がいく表情になるのは数回に一回の確率。これを百発百中で数十年間続けるのが本当の職人なのか思うと、心の底から畏れを感じる。
ベンツマークを塗り分ける時などは心の乱れや体調の良し悪し、体の衰えなども否応なしに感じさせられる。無心で作った一号車の出来を越えることはなかなか難しい。その分知恵を働かせて技とか文明の利器でカバーするようになる訳だが・・・簡単に大量生産できるようになってもまたつまらない訳で。