メルセデス・ベンツのトランスポーター その2


●発注
 「こないだ富士山に来ていたベンツ、かっこいいですね」「カタログ欲しくてヤナセに行ったんだけど、扱ってないらしいんですよ」

 外車専門のオフロードバイクショップに顔を出し、マネージャーに聞いてみた。

「あれは“Fそう”ですよ」
「えっ?Fそうって・・・トラックの?」

全く予想していなかった答えが・・・そういえばベンツってトラックも作っているって聞いたことがある。

「あれってやっぱりベンツだから、一千万円位するんですか?」
「そんなにしないですよ。280万円。ハイエースの高いのと変わらないですよ」

 なに!280万?・・・見た目と比べて3分の1以下!私の中であのクルマがぐっと身近な存在になった。買えるかもしれない。手元に280万円あるわけではないが、今乗っている軽トラと、家族用の乗用車(軽バン)を一台にまとめればいけるかもしれない。

 どんどん本気になっていって、ある日ついにFそうに電話をした。個人でFそうに電話して相手にしてもらえるのだろうかとやや不安になりながら。「ベンツのトランスポーターってそちらで扱っていますか?」すると中年の男性が「はい?ちょっと待って下さいね。・・・おーい、うちでベンツのトランスポーターなんか扱ってたかー?」ここで保留になり、しばらく待たされた。「もしもし、うちではやってないですよ」「え・・・そちらで扱っていると聞いたんですが・・・」「どんなクルマですか?トランスポーターって」「あの・・・ハイエースみたいな・・・」「ああ!ああ!あれですか。やってますよ」M菱の人にハイエースではまずかったかな、と思ったが、それで通じたようだ。しかしこのときのやりとりで、ディーラーに対して「なにか違う」という気持ちがすでに芽生えていた。とりあえずその日のうちにカタログをもらいに行った。

 しばらくの間悩み、諦め、また復活する・・・一番安いのは確かに295万円だったが、リアシートも窓も何もない。明窓バンという全部窓が明いているタイプもあるのだが、これは相当高い。リアシートがある中央部にはやはり窓は欲しいのだが、逆にリア部は埋まっていて欲しい。バイクを載せる部分は窓がない方が便利だし、富士山で見たあのベンツのまねをして、KTMのバンステッカーも貼りたい。そして、ハイルーフが欲しい。車イス生活の母を乗せ、中であれこれ世話をするために、腰をかがめることなく立てる高さがどうしても欲しかった。

 数ヶ月後、覚悟を決めて買いに行く。とりあえず特注の部分が多いので、見積もりを取ることにする。208Dハイルーフにリアシートを増設して5人乗り、ドアパネルと反対側に窓明け2ヶ所などを伝え、見積もりを出して欲しいと伝えた。ところがどうしたことか、その後一ヶ月以上待っても連絡がこない。電話して催促する。見積書が届いたのは10月中頃。それからは対応がスピーディになった。本当に買う気があるのか疑われていたのかもしれない。納車も当初数ヶ月かかるとのことだったが、かなり早くなって年内に入るかどうかとのことだった。


(当時のカタログ)

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