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レクサス

 レクサス苦戦しているようですな。クルマとしてはこの手のクルマにはほとんど興味がないので気にしていないが、ブランド戦略としてはなかなか興味深く、たまに思い出しては成り行きを見守っている。巷ではBMWやベンツがライバルで、それに苦戦しているという解説が多い。「ベンツやBMWなんかより国産の方がよっぽどいいのに、日本人はブランドが好きだから」という意見もよく聞く。けど、ちょっと違うように感じる。

 レクサスの記事が新聞や雑誌に載ると、車種の後ろに(旧ハリアー)とか(旧アルテッツァ)などと表示されることが多い。同じクルマがトヨタでは安く売っている(いた)ことがバレバレなわけで、賢い消費者はそっちを選んでいたのではないだろうか。「ベンツにしようか、トヨタにしようか」と浮ついている層のうち半分がベンツを選び、もう半分はトヨタを選んでいたのだろう。レクサスで扱うクルマは順次トヨタでの扱いを終了しているようだから、レクサスの販売台数は今後増えていくだろう。けれども、それだけではトヨタの販売台数がレクサスに移行するだけで、対ベンツ・対BMWという戦いはまた別の所での戦いになるのではないかな。

 セルシオの後継も今月発売だそうで、トヨタのサイトからはセルシオの文字が消えた。仕事仲間に元トヨタのディーラー営業経験者がいるが、セルシオの売り方は普通のクルマとはまったく違うそうで、「買ってくれるところに売りに行く」のだそうだ。クルマ雑誌では「ベンツS対BMW7対セルシオ」なんて乗り比べをよくやっているけど、そんなのを読んで本当にセルシオか7かSかを悩んで買う人はごくわずかで、実際に買うのはそのイメージやスピリットを引き継いでいる(と思い込んでいる)マークXとか3とかCなのかもしれない。Sか7かセルシオか・・・と悩んでいたごく一部の個人ユーザーはレクサスに取り込めるかもしれないけれど、今までセルシオを買っていた層の中で中心となるあたりが、なじみのトヨタのセールスマンから「うちではもうセルシオ扱えないんです」と言われて制服や作業服を背広に着替えてレクサス店に出向くだろうか。次期クラウン(1グレードアップ)がそこそこ良い出来だったら面白い戦いになりそうだな(そんなの出るのかどうか知らないけれど)。

 「安くて故障の少ない商用車」というイメージで売れている国・地域で、高級外車と本気でぶつかるための戦略としてはレクサスは最適だったのだろう。でも、日本はトヨタの本拠地で、トヨタ=日本一・世界一のクルマ屋さんということはみんな知っている。セルシオもビッツもハイエースも宅急便のトラックも全部トヨタだって知っている。だからそこで新しいブランドを作っても、みんな中身で考えているし、不景気だから安い方(トヨタブランド)を選んじゃう。レクサスの敵はベンツでもBMWでもなく、そして日本人のブランド信仰でもなく、母体のトヨタだったのではないか。もちろんワシでも気付くぐらいのことなので、偉い人たちはもっと前からいろいろ考えて、イケると判断してGoを出しているんだろう。けれども、後手後手で一生懸命つじつまを合わせているような状態にも見えてしまうのだ。

 もし本当にセルシオ対次期クラウン(1グレードアップ)が本気の戦いになってきたら、次にやるのは色制限かな。「トヨタ店ではシルバーと黒と白は選べません」これは効くだろうな。

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